朝、カーテンを開けたときの空気の質。
雨が降り出す前の、わずかに湿った匂い。
お気に入りのハンドクリームを塗ったあと、ふと指先から立ち上る香り。
香りは見えないけれど、確かにその日の気分を左右するもの。
だから私は、服を選ぶように「香りを使う日と、使わない日」があります。
香りが“私に戻るスイッチ”になることがある
忙しい日や、気持ちがふわふわしている朝。
私はお気に入りのルームフレグランスをひと吹きして、深く息を吸い込みます。
それだけで、頭の中がすっと整うような感じがするから不思議です。
ラベンダーの落ち着いた香り、ユズのような爽やかさ、ウッド系の静かな深み。
どれも「この香りを使う日は、こう過ごしたい」という自分の“感覚の地図”のようなものがあって、それを頼りに、日常をほんの少しだけ調律している感覚があります。
香りって、単なる“気分の演出”ではなく、“自分を自分に戻すスイッチ”にもなるんです。
誰かのためじゃなく、自分のために香る空間
来客があるときだけ部屋を整えるのではなく、誰にも見られない日だからこそ、空気を整えておきたいと思うことがあります。
玄関に置いたディフューザーの香りが、自分を迎え入れてくれる感じ。
クローゼットの奥からふわっと立ち上がる香りに、安心する瞬間。
そういう“私のための香り”が、日々の輪郭をつくってくれます。
自分のために香らせるって、少し贅沢に思えるかもしれないけれど、実はとてもささやかな習慣です。
お気に入りのスプレーをひと吹きするだけ、好きな精油をティッシュに垂らして引き出しに入れておくだけでも、空気の質は静かに変わっていきます。
香りは、“今の私”を教えてくれる
不思議なことに、同じ香りでも、日によって感じ方が変わることがあります。
昨日は心地よかったはずの香りが、今日はなんとなく遠く感じる。
逆に、しばらく手に取らなかったものが、急にしっくり来る日もある。
それはきっと、私の気持ちが少しずつ変化しているから。
香りは、“今の自分の内側を映す鏡”のような存在だと思っています。
だから私は、季節や気分によって香りを選ぶのが好きです。
春はグリーン系、夏は柑橘、秋はウッド、冬は少しだけスパイスを。
“これが似合う”ではなく、“これが今の私に寄り添ってくれる”という基準で選びます。
香りを整える=暮らしに意志を宿すこと
香りは見えないし、触れられない。
けれど、空間に“自分らしさ”をじんわり染み込ませるような力があります。
忙しない毎日のなかで、香りを整えるという行為は、「今日はどんなふうに過ごしたいか?」と自分に問いかける時間でもあります。
私はそのとき初めて、“なんとなく”ではなく、ちゃんと自分の意志で一日を始めている気がするのです。